梅毒
梅毒
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による感染症で、さまざまな症状を呈します。性行為で感染するため性感染症の側面があります。そもそもなぜ「梅毒」と書くのでしょうか。梅毒の名前の由来は、江戸時代に流行した際に、皮疹の形が「梅」の花に似ていると考えられたことから名付けられました。そして、当時は有効な治療法がなく、放置していると全身に影響を及ぼし、死に至ることもあったため「毒」という字が使われました。すなわち、梅毒とは、「梅」のような皮疹を呈する「毒」のように怖い疾患、という意味です。
しかし、時代が進むにつれて治療法の研究が進み、現代においては、適切に治療すれば、死に至ることは稀となりました。一方で、梅毒患者数は大きく増加しており、2022年以降は毎年1万人を超える新規患者数が報告されています(男性:20代~50代、女性:20代が中心)。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。早期の診断と治療が重要です。
梅毒トレポネーマは、主に性行為によって感染します。口や性器などの粘膜を伴う性行為によって微細な傷から侵入し、局所感染が成立します。その後、局所症状(第1期梅毒)から始まり、多彩な全身症状(第2期梅毒)も呈するようになります。
梅毒は、感染からの時間経過や症状から、下記のように分類されます。
●第1期梅毒:感染から3週間後頃
●第2期梅毒:感染から数か月後頃
●第3期梅毒(感染から数年後頃)・第4期梅毒(感染から10年後以降)
治療を受けずに経過すると、皮膚や骨、内臓にゴムのような硬いしこり(ゴム腫)ができ、組織の破壊を起こすことがあります。さらに経過すると、脳や神経、心臓や血管に障害が生じ、生命に関わる場合もあります。現在では、適切な治療によりこの段階に進むことはまれです。
●その他:先天梅毒
妊娠中に梅毒に感染すると、母親だけでなく、胎盤を介して胎児にも感染することがあります。その結果、流産、早産、死産の原因となったり、生まれてくるお子さんの神経や骨などに障害が生じたりする可能性があります。これを先天梅毒と言います。
クリニックでよく診る梅毒は、第1期・第2期梅毒が多く、その時期の症状は非常に多彩で、他の疾患と紛らわしい場合も多いため、気になる症状があれば早めの受診が大切です。
梅毒を診断する上で大切なのが採血です。性質の異なる2種類の抗体検査を組み合わせて判定します。一つはTP抗原法(TPLA/TPHA)で、梅毒トレポネーマに対する特異的な抗体を検出します。梅毒特異的な抗体であり、診断において重要ですが、一度感染すると治癒後も陽性が続くこと(既感染)がある点に注意します。もう一つは脂質抗原法(RPR)で、梅毒による炎症反応を間接的に調べる検査です。梅毒の活動性を反映しやすく、治療効果の判定に有用ですが、妊娠、高齢、自己免疫疾患などでも陽性になること(生物学的偽陽性)がある点に注意します。これら2つの検査結果を総合的に評価し、症状や経過とあわせて梅毒の診断を行います。必要に応じて2~4週間後に再検査することもあります。
梅毒の治療は主に、ペニシリン系抗菌薬の内服です。第1期には2~4週間、第2期には4~8週間、第3期以降には8~12週間、1日3回毎食後の内服を行います。ペニシリンアレルギーの場合には、ミノマイシンを処方することが多いです。内服開始後、数時間~数日で、発熱、皮疹、だるさなどの風邪のような症状が出ることがありますが、これはJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応といい、抗菌薬による梅毒トレポネーマの破壊に伴う反応であり、薬疹ではないのでご安心ください。風邪のような症状は通常1日程度で自然軽快しますので、そのまま内服していただいて構いません。梅毒の治癒効果判定は、採血でRPRの値の変化をみておこないます。したがって、治療期間中、定期的な採血が必要です。
梅毒で特に注意すべき点をまとめました。
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