アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
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アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚疾患です。多くはアトピー素因(アレルギー体質)を持つとされています。乳幼児期に発症することが多いものの、成長とともに症状が軽快する場合もあれば、成人になってからも症状が続く、あるいは発症するケースも少なくありません。症状は顔、首、肘や膝の内側、体幹などに現れやすく、年齢によって好発部位が異なります。
アトピー性皮膚炎は、見た目の変化や慢性的なかゆみにより、睡眠や日常生活、仕事・学業に支障をきたすこともあります。しかし、適切な治療とスキンケアを継続することで、症状を安定させ、再発を予防することが可能です。長期的な視点での治療が重要となる疾患です。
アトピー性皮膚炎の原因と病態は、①バリア機能障害、②炎症、③掻痒で説明されます。下図は、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」からの引用に、若干の解説を加えたものです。

アトピー性皮膚炎では、フィラグリンという皮膚の保湿に関わる因子が低下し乾燥状態になっています。すなわち、皮膚のバリア機能が障害されている状態であり、その状況下では、外的刺激や抗原(ダニ、ハウスダスト、花粉などのアレルゲン)が皮膚内に侵入しやすくなっています。刺激が加わると、上図のような複雑な炎症反応が起き、痒み(掻痒)が引き起こされます。痒い(Itch)ため掻いて(Scratch)しまうと、バリア機能がより一層障害され、悪循環(Cycle)を招きます。これをItch-Scratch Cycleと言います。アトピー性皮膚炎がよくなったり悪くなったりを繰り返すのも、これが原因です。
アトピー素因(アレルギー体質)を持つ方は発症しやすい傾向がありますが、必ずしもそれだけが原因ではありません。汗、乾燥、精神的ストレス、ダニやハウスダスト、花粉、衣類の刺激など、日常生活に存在するさまざまな要因が症状の悪化に関与します。
アトピー性皮膚炎の診断は、主に問診と視診・触診によって行います。症状の経過、かゆみの有無、湿疹の分布・性状、再発の頻度などを総合的に判断します。アトピー性皮膚炎と症状が似ている他の疾患との鑑別は重要です。必要に応じて顕微鏡検査、採血、皮膚生検を行います。
また、アレルギーの関与(ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットなど)を調べるため、アレルギー検査(View39)を行うことがあります。増悪因子を避けることも治療につながるからです。また、アトピー性皮膚炎の病勢(IgE抗体値、好酸球数、TARC値など)を評価するため、採血を行うこともあります。病勢の把握は長期的な治療において重要な指標となるからです。
アトピー性皮膚炎の治療は主に、外用薬と紫外線療法(エキシマライト)です。時に内服薬も使用します。
5つのランクのステロイド外用薬があります。剤形も、軟膏、クリーム、ローションなどがあります。アトピー性皮膚炎の治療において、最も基本になる塗り薬です。炎症がある部位に、症状に応じた外用薬を使用し、かゆみや赤みを抑えます。症状の強さや部位に合わせて薬を選択し、適切な量と期間を守って使用することが大切です。最初は強いランクのステロイドを使い、症状に応じてランクダウンすることも多いです。
ステロイドを長期間外用すると、副作用が現れてきます。症状が落ち着いたら、顔や首など皮膚の薄い部位には、上記のような非ステロイド外用薬を選択することもあります。
皮膚の乾燥を防ぐため、保湿剤によるスキンケアを毎日継続することも大切です。剤形は、軟膏、クリーム、ローションがあります。保湿の効力の強さは、軟膏>クリーム>ローションですが、使用感や一人ひとりの肌に合った保湿剤を使用することが大切です。保湿は症状が落ち着いている時期にも重要で、再発予防につながります。
このように、アトピー性皮膚炎の治療においては、炎症を抑える外用薬と、皮膚のバリア機能を保つ保湿が最も基本になります。症状が落ち着いた後でも、保湿によるスキンケアに加え、ステロイドや非ステロイドの外用薬を定期的に(週2回など)外用することが推奨されています。見た目には症状はなくても、潜在的に炎症が残っている状態があるためです。これをプロアクティブ療法と言います。
当院ではエキシマライトを使用した紫外線療法も行っています。308nmの波長の紫外線を患部に照射するターゲット型の治療法です。外用薬では十分な効果が得られない場合や、難治性の病変に対して有効です。照射時間は数秒から数十秒程度です。週2回の通院が理想ですが、1~2週間の間隔でも効果があります。皮膚の炎症を抑える効果があり、かゆみの軽減も期待できます。
ヒスタミンも痒みを引き起こします。ただし、アトピー性皮膚炎の病態においては、ヒスタミンは痒みの主要因ではありません。抗ヒスタミン薬は、部分的に痒みを抑える効果があるものの、完全に痒みを抑えることはできません。外用薬との併用で使用することが多いです。
炎症に関わる特定の分子を阻害し、免疫を抑える飲み薬です。16歳以上で、ステロイド外用、紫外線療法などの治療で十分な効果が得られず、皮疹が体表面積の30%以上に及ぶ方が適応になります。具体的には、体の広範囲に赤みや掻き傷がある方、顔の赤みがなかなか改善しない方、痒疹(ようしん:ボコボコとした痒い皮疹)が多発して痒みが激しい方に有効で、内服後速やかに痒みが軽快します。長期間飲み続けるものではなく、8~12週間で終了します。使用中は腎障害などの確認のため定期的に採血を行います。症状が軽快した後は、通常の外用治療に切り替えます。
上記でも改善が乏しい重症な場合、下記の治療が選択肢になります。
これらの治療は、即効性はあるものの、値段が高い治療になります。当院では行っておらず、必要な場合には専門医療機関へご紹介いたします。
日常生活でのスキンケアや悪化因子の回避も重要な治療の一部です。
室内環境
部屋を清潔な状態に保ち、こまめに掃除機をかけたり、布団やシーツを洗ったりしましょう。定期的な換気も必要です。アレルギー検査(View39)でダニ、ハウスダストに高い数値を示している場合は、特に有効な治療になることがあります。
衣類・寝具
羊毛素材やごわごわした素材の衣類は、その接触で皮膚を刺激するため、使用しないようにしましょう。ナイロンタオルなど硬い素材での清拭も、皮膚のバリア機能の低下や皮疹の悪化につながります。低刺激性の衣類やタオルを選びましょう。綿素材が推奨されます。
入浴・洗浄
毎日シャワーを浴び、身体を清潔に保ちましょう。ボディソープなどで優しく患部も洗いましょう。シャンプーやリンス、石けんなどのすすぎ残しや過度の使用で皮膚炎を誘発することもあるので注意しましょう。化粧落としのクレンジングが皮膚への刺激になることもあります。化粧はぬるま湯でやさしく洗い流しましょう。唾液や汗は洗い流すか、濡れた柔らかいガーゼなどで拭き取るようにしましょう。
身体のケア
髪の毛の先端部の接触などの軽微な刺激でもかゆみを生じます。髪の毛を短く切る、あるいは髪の毛を束ねるなどの工夫が必要です。掻いても皮膚に傷がつかないように、爪は短く切りましょう。時には就寝前に手袋を着用し、直接皮膚を搔けないようにすることも有効です。
アトピー性皮膚炎と症状が似ていて、かつ治療方針が大きく異なる疾患を下記に挙げました。ガイドラインにも鑑別すべき疾患として記載されています。
ヒゼンダニ(疥癬虫)による感染症です。手に好発しますが、体にも皮疹や掻き傷が多発し、強いかゆみを伴います。顕微鏡検査で虫体や虫卵を見つけることで診断します。家族内や施設内での集団感染が起こりやすく、抗寄生虫薬であるストロメクトールの内服が必要です。
アトピー性皮膚炎との鑑別が必要なのは、全身性エリテマトーデス(SLE)と皮膚筋炎です。疑わしい場合は採血などを行います。治療は免疫抑制薬やステロイドの全身投与など専門的な治療が必要です。
皮膚に発生するリンパ球の悪性腫瘍です。慢性的な湿疹様の皮膚病変や紅斑、結節を呈し、アトピー性皮膚炎と似た症状を呈することがあります。疑わしい場合は皮膚生検を行います。治療は化学療法や放射線療法などの専門的治療が必要です。
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